LEDなどの高輝度の光源を直線状に並べて高速に動かした場合、光源アレイ自体
は1次元であったとしても、光源の残像効果によって、観察者の網膜上では2次元 の画像として知覚される。右図は、1 次元のLEDアレイを高速に 右方向に動かした時に画像が残像効果で提示される様子を表したものである。
光源の点滅という時間方向の変化が、空間方向の解像度に置換されていることが 分かる。時間解像度によって空間解像度が補われ、1次元が2次元に拡張されると 解釈することができる。
LEDから出た光は遮光板(パララクスバリア)によって遮蔽されるため、 右目からは右側のLEDアレイしか見えず、左目からは左側のLEDアレイしか見えない。この条件を保ったまま、
提示ユニットを観察者の周りで高速に回転させることで、没入立体画像を提示する。 節で述べた残像効果から、提示ユニットの本数自体は少なく ても、観察者には画像として認識される。
また右目と左目で異なる視差画像が提示されるため、観察者は画像に対して立 体感を得ることができる。なお、LED の輝度は十分大きいため、回転による走査を行っても、十分な輝度で画像を提示することができる。
回転型パララクスバリアによる立体画像提示をIPTやHMDなどの既存の立体・没入 型ディスプレイと比較した場合、360度の広視野角で立体画像を提示しながら、 なおかつ特殊な眼鏡の装着を必要としない点がメリットである。観察者が立体視 可能な領域はデバイスの中心に限られるが、円筒型というデバイス形状から、観 察者は自然に立体視可能領域に立つことができる。ただし、頭部の大きな運動が 抑制されるため、運動視差の提示には向いておらず、同時に立体画像を見ること ができるのは原則として一人だけである。また、IPTがプロジェクションによっ て多くの体積領域を必要としているのに対して、回転型パララクスバリア方式で はより少ない体積領域で効率よく没入画像を提示することができる。 一般のパララクスバリア方式との比較で述べると、一般のパララクスバリア方式 ではミクロン単位のスリット幅でパララクスバリアを用いているため、回折の影 響を計算する必要があるが、回転型パララクスバリア方式では、空間解像度の改 善をパララクスバリアの密度ではなく時分割で実現しているため、パララクスバ リアの大きさが数cmのオーダーであり、回折の影響を考える必要がない。 コミュニケーションを利用目的として見た場合、裸眼での立体視が可能な点が非 常に大きなメリットとなる。また、双方向の通信では、観察者への画像の提示と 同時に観察者の画像を取得する必要があるが、提示ユニットが高々数十本のLED アレイで構成されるため、画像の提示面と同じ面内にカメラを配置することが可 能であり、撮像機能との相性がよい。
| 項目 | 性能 |
| 提示ユニット数 | 36[組] |
| 垂直画素数 | 600[pixel] |
| 水平画素数(360度) | 3168[pixel] |
| 視力換算解像度 | 0.148 |
| 提示面半径 | 1000[mm] |
| 提示面高さ幅 | 1200[mm] |
| 画素ピッチ | 2[mm] |
| 回転速度 | 1.66[rps] |
| フレームレート | 60[fps] |
| 輝度階調 | RGB 各 10 bit |
| 入力フォーマット | UXGA x 2ch |
| カメラ解像度 | VGA |
| カメラ焦点設置半径 | 950[mm] |
| カメラ画角 | 45[deg] |
| カメラフレームレート | 15[fps] |
| カメラ出力フォーマット | IEEE1394 x 2ch |
主な特徴